僕は真っ暗闇の中、どうしていいかわからず、
ずっとずっと飼い主に届くように大きな声で鳴き続けた。
でも飼い主には届かなかった。
僕の目の前で知らない人たちが話していた。
「昨日の夜中から犬の声がしてたけど、この子だったのね。」
「それにしても大きな犬。」
「かなり年寄りのようだね。」
「迷子になったのかな。」
「雨が降ってきたし、雨のかからない所へ行きましょう。」
「ん??この子動かないわよ。」
「ほら。あっちへ行こう!」
「もしかして、立てないんじゃ・・・ないの?」
「ほんと!」
「立てないのに一人でこんな所に来れないよね・・・」
知らない人たちがどこかへ電話をしていた。
「そちらは動物を保護してくれる所ですか?」
「大きい犬が捨てられているんです。助けに来てください。」
「どうも立てないみたいで・・・」
そうか。僕は捨てられたのか・・・
きっと僕がお利口にできなかったからだ。
ペットシーツとかいう紙ぺらでトイレが上手に出来なかったからだ・・・
もっともっとお利口にしていれば良かったと色々考えていたら数時間は経っていたと思う。
また知らない男の人が僕に近づいてきた。
「ほんとですね。後ろ足がどうも使えないようです。」
「では、こちらで責任をもって保護させていただきます。」
僕はその男の人に車に乗せられてまた知らない場所へ連れて行かれた。
そこは捨てられたり行き場の無くなった動物たちが暮らす場所だった。
車が停まり、ドアが開いた。
女の人の声がした。
「この子が西宮浜で捨てられていた子ね。」
「!?結構なおじいさん。。。。」
その女の人が僕の頭に手のひらを近づけた。
!!!また叩かれる!
僕は反射的にその彼女の手を咬んでいた。
・・・・・
「ごめんね。初めて会ったのにビックリしたよね。」
彼女は僕を怒ったりしなかった。
そして悲しそうで困ったような顔をしていた。