はまじい

はまじぃの物語~第1章「はじまり」~

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僕の名前は「はまちゃん」
僕はもうお爺さんだ。
ラブラドールレトリーバーとかいう犬らしい。
この「はまちゃん」という名前はお爺さんになってから呼ばれるようになった名前。
それまでは・・・・
そう、「ブラック」と呼ばれていた。

もう十数年も前の仔犬の頃、僕はペットショップのショーケースの中にいた。
「かわいぃー!」
「ねぇ、この子にしよう!ラブラドールは賢いって言うし。」
「絶対、飼い易いよ!ねぇ、この子を買いましょう!」
「介助犬や盲導犬みたいにきっと賢くなるぞー!」

僕を狭いショーケースから出してくれたのは若い夫婦だった。
とっても嬉しかった。
尻尾を何回も何回も振って喜んだ。
それから僕の新しいお家での幸せな生活が始まった。
その夫婦は毎日、毎日、可愛がってくれた。
「ブラック!ブラック!」
僕は呼ばれるとすぐに飛んでいき、座っている「飼い主」の膝で膝枕をしてもらった。
「ブラックは本当に膝枕が好きだよねー」
「ほんと可愛い。」
とっても幸せだった。こんな毎日がずっと続くと信じていた。

けれど・・・
僕が大人になってきた頃、「ブラック」という名前もあまり呼ばれなくなった。
お爺さんになってきた頃には夫婦の仕事が忙しくなり、
一人でずっと長い間、留守番する毎日。
飼い主の帰りが遅くなった時、お散歩でいつもトイレをしていた僕は
我慢しきれずトイレを失敗した。
飼い主が帰ってくると叱られ、叩かれた。
「もう!家を汚さないで!」
「我慢できないなら、ここの上でしてよね!」
と大きい紙のようなものを床に敷かれた。
「ペットシーツ」というものらしい。
けれど僕は使い方がわからなかった。
飼い主はいつも怒りながらそのペットシーツを床に敷くので
その紙ぺらを見るのが僕は嫌いだった。

けれど、初めてペットシーツで上手に出来た日。
きっと褒めてもらえる!そう思ってワクワクしながら飼い主の帰りを待っていた。
帰ってきて、嬉しくて思わず「ワンワン!」と声を出した。
「こんな夜中に吠えるなんて、近所迷惑だろ!」
また叩かれた。
それからは本当にその紙ぺらの事は大嫌いになった。

そこからまた月日が流れ・・・
お散歩に行ってもらえなくなってからもうどのくらいになるだろう。
運動しなくなった僕は後ろ足にだんだんと力が入らなくなった。
そして遂に後ろ足は使えなくなり立つ事が出来なくなった。
立つ事が出来なくなった僕を見て、飼い主は毎日ため息をついた。
もうペットシーツで上手にトイレも出来なくなった。
トイレを失敗する度に叩かれた。
そしてついに僕は自分を守る為に叩く飼い主の手を咬んでしまった・・・

そんなある日。
真夜中に飼い主は僕を車に乗せてどこかへ出掛けた。
人通りのない場所につき、僕は降ろされた。
そこで僕はずっと着けていた首輪を外された。
そして。。。
飼い主は僕を置いて車に乗って走っていった。
一度も振り返らずに。

僕は追いかける事さえ出来ない身体になっていた。
鳴いて、大きな声で鳴いて。。。
この声が飼い主に届いて戻ってきて欲しい。そう思って鳴き続けた。
それしか僕には出来なかった。

お日様が見えてきた頃に僕の鳴き声を聞いて僕の前に現れたのは
知らない人達だった。

 

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